転職活動回顧録①

「転職を考えたきっかけは何ですか?」

転職エージェントにも面接官にも何度も聞かれた質問だが、正直判然としない。人はわかりやすいストーリーを求めがちである。何か決定的なターニングポイントがあって、それを機に誰かや何かが変化するというわかりやすいストーリーを。でも世の中は、そんな単純で筋の通ったお話ばかりでない。嫌がる本能に鞭を打って出社するときであったり、諦めたかのように休日出勤の申請書を出すときであったり、先輩や上司が消耗している様を見たときであったり、お通夜のような進捗会議に参加したときであったり、5年後もここにいる様子が想像できないときであったり、何年繰り返しても状況は改善しないであろうと悟ったときであったり...そういう小さな絶望が積み重なって閾値を超え、行動につながることだってあるはずだ。

 

入社した当初から、漠然と「いつか転職するのだろうな」とは思っていた。それは別に会社が嫌だからではなく、シンプルに「や、40年間一つの会社と添い遂げるとかないわ~w」という気持ちからだった。仮にめちゃくちゃホワイト企業で、仕事の内容もまあ面白かったとしても、ずっといたら自分は飽きてしまうだろうなと思った。

で、その「いつか」が「○月までに」という形で現実味を帯びてきたのはやはり、最も忙しかった12月あたりからだと思う。朝から晩まで働いて、帰宅したら最低限のことを済ませてまた朝出社する。わずかな休日さえ休日出勤に蝕まれるし、何をしていても仕事の問題が頭の中を不法占拠してくる。朝が来るたびに心の中がどす黒い気持ちで満たされていたが、それが吹きこぼれないように蓋をして出社していた。

会社では次から次へとタスクが湧いてきた。その状況は誰にとっても同じだった。皆が皆フル稼働(そしてキャパオーバー)していた。自分もつらかったが、年次が上がるほど目に見えて負荷は上がっていた。「何年かした後、自分があの席に座ることになるのか?」「来年も、再来年もずーっとこんなことやるのか?」「人生それでいいのか?」「もっと幸せな道はないのか?」いろいろな思いが、頭をもたげるようになってきた。

 

多分この頃から、Googleの検索履歴に「転職」というワードが現れ始めた気がする。そして年末年始に入り、帰省した実家で転職エージェントのサービスに登録したのは、私の中では自然な流れだった。

 

続く